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| vol.16 【宮城県大崎市】株式会社一ノ蔵 代表取締役社長 松本善文さん 掲載日:2011/7/9 |
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| ■3月11日 14時46分 |
東京新宿の高層ビルの42階で、全国から100蔵元が集まる会議に出席していた。地震発生時は、ちょうど休憩時間で会社と携帯電話で話していたが、電話の向こう側から伝わってくる声で、尋常ではない状況がわかった。ほどなく東京にも地震が到達し、高層ビルが折れるのではないかというくらい長く強い揺れだった。エレベーターが停止したので非常階段で地上へ降り、公共交通機関が使えなかったので、レンタカーを探したが貸てもらえず、巣鴨に嫁いでいた姉の車を借り、東京を出発したのは夜中の12時のことだった。
高速道路が閉鎖されていたため、ひたすら一般道を走り続け、18時間以上かかってようやく翌日の夕方6時過ぎにたどり着いた。自宅に到着するや否や、すぐさま会社へと向かった。
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| ■被害の状況 |
倉庫や冷蔵庫に保管していたお酒のうち13,000本あまりが崩れ落ちて破損した。社屋の最上部に醸造用の水を蓄えておく高架水槽が破裂し、その水が階下に漏れ出た。ボイラーや精米機も破損し、作業中の米も廃棄せざるを得なかった。原酒貯蔵タンクは幸いなことに建物側に倒れたため、被害が少なくて済み、当面の出荷にも対応できた。津波で被災された沿岸部の蔵元さんと比較すれば、被害はあったものの、まだまだましな方だと思う。ラインの復旧から出荷までは11日間を要したが、「造り」は1ヶ月以上停止した。例年であれば終えている作業だが、ここまでこれたことをありがたく感じている。
津波で家が流されたり、家族が犠牲になった社員がいるものの、従業員全員の生命だけは無事だった。それだけで良かったと感じている。家を流された石巻の蔵人へは、通常は杜氏が仕込みの際に寝泊まりする部屋を提供するなどした。震災直後から社員一丸となって、復旧作業に取り組んだ。3月18日には電気が復旧し、瓶詰めのラインが稼働できる状況となり、現場で早急に配送用のトラックをチャーターし、3月22日、震災後初めて出荷を行うことができた。
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| ■全国からの支援、被災者の立場からの寄付 |
震災直後から全国各地から支援や励ましの声をたくさんいただき、それが力となり2回の大きな地震を乗り越えることができた。震災後38日が経過した4月18日に酒造りを再開したが、酒屋が酒を造るという当たり前のことができるようになったことを蔵人も喜んでいた。ここまでご支援いただいた方々に対して、よりいっそう手をかけて、心を込めたお酒を造って提供することで恩返しをしていきたいと考えている。一ノ蔵では、例年4月にお客様を呼んでお祭りを実施している。今回は震災のため中止としその予算は宮城県に寄付を行った。全国主要都市で行ってきた催事もすべて取りやめ、その費用も寄付に充てた。我々も被災している立場であり、損害の修復にどれだけの費用がかかるか分からないという状況の中で複雑な思いはあったものの、宮城県民、宮城県の企業として「何かしなければ」という思いからの決断だった。
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| ■環境保全米 |
震災で、田んぼへの塩害などによる原料の確保の問題が懸念されたが、幸いなことに来年度仕入れる予定の米については見通しが立った。
平成5年の大冷害の際でも無農薬、有機栽培をしていた農家では、平年と同じ品質で同じ収量を保つことができたと聞く。それをきっかけに慣行農法との比較、環境に優しい農業の推進のために「環境保全米ネットワーク」に賛助会員として加入した。平成13年に会員となり、無農薬米による純米酒を発売し、その売り上げの一部を「環境保全米ネットワーク」へ寄付をするという形を作った。
実際に酒造りに使用してみると、同じ品種で同じ造り方をしても発酵が違う経過を辿って行く。慣行農法の物であればだいたい3週間でお酒が仕上がって行くのに対し、有機米だとさらにそこから3日、4日と長い経過を辿る。視覚による判断でしか無いが、有機米の方が、発酵が穏やかながらも継続的にゆっくりと進んでいき、慣行農法の物は一時期とても活発になるが、その後すぐに収束してしまうといった違いがある。個人的な感覚かも知れないが、でき上がった酒を利き酒しても慣行農法の方に比べて、有機米の方はまろやかな感じに仕上がっている。「造り」をやっている中で明確な差が出てきているので、これは今後も大切にしていきたいと考えている。慣行農法から環境保全型の農業にしていくことによって、ここの地域に昔いた生物、白鳥やマガンなどが戻ってきている。環境に優しい農業をしていくことが、子どもたちや未来への恩返しではないが良い環境を残していく手助けになるのではないかと思っている。
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(取材日 2011.6.28 佐々木)
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| =紹介= |
株式会社一ノ蔵
住所 大崎市松山千石字大欅14
TEL 0229-55-3322 FAX 0229-55-4513
URL http://www.ichinokura.co.jp/
株式会社一ノ蔵では「できることからこつこつと、はじめのいっぽ」をテーマに、気取らず気軽に持続可能な環境活動を実施して、環境に優しい企業を目指しています。
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