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活動のご報告

活動のご報告

<催事参加>たまきさんサロン講座「東北の風土を生きる人々」/2016.4.23

2016.05.18 10:43

 仙台市に開館した「せんだい環境学習館(愛称:たまきさんサロン)」で開催された、たまきさんサロン講座「東北の風土を生きる人々」に参加してきましたので、ご報告いたします。

たまきさんサロンとは…
 仙台市は、市民の環境意識を促すため、仙台市環境Webサイト「たまきさん」を運営しています。サイトでは、環境の「環」から名前がついた「たまきさん」というキャラクターが、生活者の目線で、環境にちなんだ話題を発信します。
 今年の4月5日には、かつての「仙台市環境交流サロン」を東北大学青葉山キャンパスに移転新装して「せんだい環境学習館(愛称:たまきさんサロン)」を開館しました。「たまきさんサロン」では、セミナーや展示のためのスペース、環境に関する図書の貸出や情報の提供などが行われていて、環境についてさまざまな角度から学べることを目的としたサロン講座も定期的に開かれます。
 
催事名 : たまきさんサロン講座「東北の風土を生きる人々」
講師名 : 結城登美雄(ゆうきとみお)氏(地元学・民俗研究家)
主 催 : せんだい環境学習館たまきさんサロン(仙台市環境共生課)
日 時 : 2016年4月23日(土)13時00分~15時00分
会 場 : 東北大学大学院環境科学研究科本館2階大講義室
 
内容
 
 開館後初めてとなる「たまきさんサロン講座」は、東北各地の暮らしを丹念に調べ歩いている結城登美雄氏を講師に迎え、民俗という観点で環境について考える機会を提供しました。
 
 結城氏の分析によると、田園、森林、宅地、道路、水辺の5つの空間に分けて考えた場合、東北では7割以上を山間部が占めるといいます。平らな農地が少ないため、人々は昔から山にも小さな田畑を作ってきました。1970年代以降になると、都市政策が人を宅地へと移動させ、人がいなくなった地域の耕作地は荒れ地になっていきます。それでも、かつて住んでいた人たちが時折山に戻っては山の祭を行う地域があるそうです。今は住んでいなくても、そこは人生の場なのだと氏は続けました。      ​
 
 この講座では、事例を示す写真や人々の話とともに、第一次産業の就業人口の減少や、労働の対価の低下につながる生産物の低価格化、購買者の半数以上が一次産業の重要性を認識しながら安い生産物を求めるという調査結果などが紹介されました。結城氏は、「誰が環境を作るのか。誰が食を支えるのか。農山漁村の問題は環境問題と直接関係がないと思うかも知れないがそうではない。私たちが見ている農山漁村の美しい風景は、人々の営みの場であり、私たちの食べ物を作っている場でもある。森は大切といっても、守るべき森の現実に宅地の人は想像が及ばない。現状についての認識がないままでは高圧的な環境論になってしまう。環境を、まず人が住んでいる場と受け止め、そして東北各地の小さな環境の変化を見ていて欲しい。」と話し、最後は民俗学者の柳田國男による「美しい村などはじめからあったわけではない 美しく暮らそうという村人がいて美しい村になるのである」という言葉で講座を終え、会場は暖かい拍手に包まれました。
 
 たまきさんサロンのセミナースペースでは、結城氏が撮影した東北各地の写真の展示会が同時開催されていて、講演後は、結城氏を囲み写真撮影時の様子などを聞く参加者の姿が見られました。
 
 講座を聞いていて強い印象を受けたのは「宅地の人間は、農山漁村の人間の実状に想像が及ばない」という言葉でした。想像の及ばない人間が、身勝手な環境保全活動に陥らないためには何が必要なのか、現地で根気強く集めた情報と調査に基づいて問題提起をする結城氏の活動に、大切なことを教わった気がします。結城氏が導く視点は、私たちの身の回りの実感の持てるところから環境を捉えていて説得力があり、環境についての学びが自然に心に刻まれました。ぜひ、もっと広く一般の方々に聞いていただきたい内容でした。 
 
(Report/Kagawa)