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活動のご報告

活動のご報告

<催事参加>北海道と東北をつなぐ里浜シンポジウムが開催されました/2018.6.9

2018.06.27 12:01

 主催団体「北の里浜 花のかけはしネットワーク」は、北海道民と東日本大震災被災者の交流と、津波被災地の海辺環境保全を目的に設立された団体です。被災沿岸部に蘇った海浜植物の種を採取し、北海道で苗に育て、ふたたび元の場所に植える活動に取り組んでいます。
 6月にミニシンポジウムが仙台で開かれました。
 
【「海辺の人のきずな」を。「未来への思い」を。
 里浜の再生に向けて 
 地域で守り・育て・使う海辺を目指して】
 
日時:2018年6月9日(土)13:00~17:00
会場:仙台市七郷市民センター(宮城県仙台市若林区荒井3-7-2)
主催:北の里浜 花のかけはしネットワーク
共催:仙台市高砂市民センター、里浜ネットワーク、生態系サービスの享受を最大化する'里浜復興シナリオ’創出プロジェクト
協力:新浜町内会、仙台市立岡田小学校、NPO法人名取ハマボウフウの会、荒浜再生を願う会、名取市立閖上中学校、(一社)三陸ひとつなぎ自然学校、根浜ハマボウフウ研究会、(一社)前浜おらほのとっておき、東北学院大学平吹研究室、KDDI(株)、(株)地域環境計画、雪印種苗(株)、(有)みちのくナーセリー、3.11SAPPORO SYMPO実行委員会
後援:東北環境パートナーシップオフィス、南蒲生/砂浜海岸エコトーンモニタリングネットワーク
助成:地球環境基金
 
内容:
(1)イントロダクション・趣旨説明

◆ピアノ弾き語り 奈緒氏(宮城県白石市在住、シンガーソングライター)
 私の中学の時の恩師が、女川で被災され、1,000年後の命を守るプロジェクトを当時被災された生徒さんたちと今も頑張って活動なさっています。自分にも何か出来ることはないかと言う想いから、この曲を作り始めました。しかし、作曲の途中で、自分が脳腫瘍になり視野が欠ける中、手術の前に何とかCDにしたいと頑張りました。…震災で亡くなられた数多くの方々の想いと遺された方々の想い。そして自分が病と戦っていく事。命 というものをリアルに感じながら仕上げた曲です。CDを作成するにあたり、ジャケットに使用させていただいたハマヒルガオの写真が、私と北の里浜花のかけはしネットワークとの 出会いのきっかけとなりました。感謝しています。
 
◆趣旨説明 北の里浜 花のかけはしネットワーク 代表 鈴木玲氏
 海辺の自然を守り残そうとする活動、ただ残すだけではなく新たな利用価値を模索する取組、海辺の自然と文化を守り育てることで、持続的に利用していくのが里浜であると考えています。里浜をめぐる様々な活動を皆さんと共有し、新しい仲間を作っていきたいと考えています。
 
(2)ミニシンポ:各団体から活動紹介・話題提供
進行:北海道大学 松島肇氏
コメンテーター:東北学院大学 平吹喜彦氏
1)根浜ハマボウフウ研究会(釜石市)伊藤聡氏

 根浜海岸はかつて「白砂青松100選」に選ばれた事がある景勝地で、海水浴場として地域住民に親しまれた場所です。東日本大震災の津波により、海岸線は大きく後退しました。海岸の瓦礫を重機で撤去するためには残った松を伐採しなければならず、ボランティアや地域住民と一緒に人の手で全ての瓦礫を撤去する選択をしました。復興とは「地域の誇りを取り戻すこと」だと捉えています。根浜ハマボウフウ研究会は、自然と人の暮らしのつながりを取り戻すことを目指して2014年2月に設立しました。根浜を再び人の集まる場所にしたいという会長の熱い想いのもと、活動に取り組んでいます。
 
2)仙台市立岡田小学校、新浜町内会(仙台市)
 岡田小学校では大震災後、生涯学習・まちづくり支援を行う市民センターと町内会、小学校、東北学院大学が連携して、地域の歴史・文化・自然資源の発掘、フットパスルートへの利活用などを行ってきました。5、6年生は津波やその後の防災工事の中で失われゆく環境を取り戻すべく、「岡田はまひるがおプロジェクト」と銘打ち、海浜植物の苗づくりから植栽までの活動に取り組んでいます。活動を通して、子どもが、学校が、何ができるだろうかと考えています。学校から浜が遠いため、気軽に出かけていくことができないのが活動の悩みです。
 
3)名取ハマボウフウの会(名取市)今野義正氏
 自然豊かな名取の海岸環境を次世代に継承していくため、宮城県絶滅危惧種ハマボウフウを中心に海浜植物の保護育成に関する活動に取り組もうと2001年に発足しました。名取海岸に2つのハマボウフウ保護区を持っています。大震災後はハマボウフウを通じて北海道の石狩中学校とご縁があり、石狩中学校で育てた苗を、閖上中学校の子どもたちと一緒に植栽する植栽交流会を開催しています。
4)荒浜再生を願う会(仙台市)貴田喜一氏
 7年前の結成当時は現地再建を、その後は賑わいを取り戻すことを目指して活動に取り組んできました。荒浜は仙台市唯一の海水浴場があり、夏になると多くの市民で賑わう思い出深い場所でしたが、大震災後は災害危険区域に指定されました。その荒浜にもう一度バスを走らせたいと、一日限りの市バスが復活する「3.11オモイデツアー」が開催され、当日は100名余りの方が集まりました。2018年6月いっぱいで会は解散することを決定しました。
5)前浜おらほのとっておき(気仙沼市)千葉一氏
 大震災後、まずは集まる所を作ろうと自分達の力で集会所「前浜マリンセンター」を再建しました。自分達で森から木を伐り出し、集会所を建て、柿渋で塗装を施し、これらの行程では子どもからお年寄りまで住民全参加を目指しました。できた集会所は90%が地元木材です。漁師のお父さんたちはカンナ削りなどの大工仕事も器用にこなし、たくさんの技術を持っていて私たちは「老テク」と呼んでいます。次は伐採した森の再生、伝統文化の再発掘、大学生向けのサバイバル教育に取んでいきたいと考えています。
 
6)地域環境計画東北支社(仙台市)千布拓生氏
 地元の環境に強い環境コンサルタントとして、企業の環境保全活動や地域の環境づくりのサポートをしています。現在はハマボウフウを始めさまざまな海浜植物が、どのような条件下であれば根付きが良いのか、実証実験に取り組んでいます。

 
(3)未来につなぐディスカッション
 ファシリテーター 北の里浜花のかけはしネットワーク 溝渕清彦氏
 後半は5人程度のグループに分かれてディスカッションが行われました。テーマは「5年後、私たちと海辺のつながりを象徴するニュースが報道されました。どのような内容のニュースでしょうか」。もう1つのテーマは「そうした未来につなげていくために、今私たちはどのように取り組んでいけばよいでしょうか」。
 海に行ったことがない子ども達が増えている今、海にどんな楽しいことがあるのかが分からない世代を巻き込んだ新しいコモンズが必要だと、楽しそうに具体的なアイディアが議論されていたことが印象的でした。
 
(Report/Suzuki)