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活動のご報告

活動のご報告

<EPO東北>EPOインターンシッププログラム(前半)/2013.7.7-10

2013.07.10 00:00

国にあるEPO間でスタッフを交換し、互いのノウハウを学びあう「EPOインターンシッププログラム」。今年度、EPO東北ではEPOちゅうごくとEPO九州より2名のスタッフに来ていただき、東北の自然や文化を感じながら、被災地の現状を把握するプログラムを行なっています。7月7日からプログラムがスタートし、北東北を回る前半が終了したので、その様子をご報告いたします。

<7月7日(日)>

■被災地の現状を見る

沿岸部を北上しながら石巻市門脇小学校、女川町(倒れたビル、津波到達点の柱)、大川小学校、南三陸町の防災対策庁舎、気仙沼市の共徳丸、陸前高田市の奇跡の一本松を訪れました。
 東日本大震災後、東北に来たのは初めてというインターンのお2人。2年以上が経過した現在、西日本では震災に関する報道は少なくなり、なかなか被災地の様子を知ることはできないそうです。現地を訪れて「自分の目で見る」ことで、いろいろと感じたことがあったのではないでしょうか。

■語り部/被災された方の話を直接聞く

防災対策庁舎、戸倉中学校、被災したビル等を回りながら、ご自身も被災されている後藤一磨さんの語りを聞きました。
 2011年5月末からスタートした語り部ガイドは、南海トラフ地震や首都直下型地震が懸念されるようになり注目されているようです。後藤さんの「人間は自然の許す範囲でしか生きられないのだと悟った」という言葉。私たちは自然の中で生かされているのだと気付かされます。実際に被災された方からお話を聞くことで、震災をより自分に近づけることができるのではないかと感じたと同時に、日頃の人間関係や自然との付き合い方を考えさせられました。
後藤一磨さんの「3.11あの時」はこちら

■リアス・アーク美術館で展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を見学

 気仙沼市にあるリアス・アーク美術館。この美術館では学芸係が中心となり、震災発生直後から約2年間の震災被害記録、調査活動を行ないました。それらの資料から厳選した資料を、常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」で公開しています。展示を見学し、学芸係長の山内宏泰さんよりお話を伺いました。
 展示資料は、写真、被災物、歴史資料等が収められ、被災現場写真には撮影の際に感じたことや考えたこと等が文章で添えられています。おそらく1枚の写真は見る人によってさまざまな感じ方を与えるでしょう。しかし、展示を見ていて写真に添えられた文章は、とても丁寧で山内さんの「伝える意志」を強く感じさせるものでした。EPOちゅうごくとEPO九州から来たお2人も、現地の方の「伝える意志」を感じ取ったのではないでしょうか。
山内宏泰さんの「3.11あの時」はこちら

<7月8日(月)>

■馬搬継承者の自然観を感じる

馬とともに山に入り、馬で木を運ぶ「馬搬」。馬搬を継承し、自然とともに暮らす岩間敬さんにお話を伺いました。イギリスのチャールズ皇太子が名誉総裁を務める「地駄曳き競技会」に出場して優勝した経歴を持つ岩間さんは「古いものと新しいものの融合が必要」だとおっしゃっていました。「昔」だけが良くて、「現代」が悪いわけではない、双方に良いところがあって、それを組み合わせていくこと。それは人が持続可能に暮らしていけるヒントではないかと感じました。また、「人が自然と共生するために、人と自然の間に馬のような草食動物をクッションにはさめばいい」とおっしゃっていて、人間社会か自然かに分けて偏るのではなく、さまざまな世界、そして組み合わせや選択肢の中に人間が生きていると気付くことが大切なのではないかと感じました。
岩間敬さんの「3.11あの時」はこちら

<7月9日(火)>

■小岩井農場の120年以上の歴史と伝統

岩手県雫石町にある小岩井農場は120年以上の歴史を誇る総合生産農場です。こちらでは品質保証部長の鎌田徹さんに東日本大震災時の取材「3.11あの時」ヒアリングを行ないました。※詳細は3.11あの時レポート参照(原稿作成中)
 その後、鎌田さんのご案内のもと小岩井農場内を見学しました。農場内には登録有形文化財が9つあり、明治末期から昭和初期にかけての建築物が多く残っています。ところが、東日本大震災では柳のようにかわし、ほとんど被害はなかったそうです。先人の建築技術のすばらしさを感じました。また、小岩井農場の面積の2/3を占める森林は、人工的に作られた植林地。不毛の大地を現在の緑豊かな大地に開拓したとは驚きです。当時と現在では環境に対する考え方はおそらく違うでしょうが、小岩井農場は自然や地域と共存してきた農場であることが分かりました。
小岩井農場 特別常任顧問 野澤日出夫さんの「3.11あの時」はこちら

<7月10日(水)>

■真の共生を学ぶ森、白神山地

今年、世界遺産登録20周年となる白神山地。NPO法人ECOリパブリック白神の渋谷拓弥さんより地元の人々の白神山地との関わりや世界遺産に登録された経緯等のお話を伺いました。白神山地は青森県南西部と秋田県北西部に広がる山地で、1980年代の青秋林道(秋田県八峰町から赤石川源流部を通って青森県西目屋村大川に抜ける広域基幹林道)開設計画を契機にその貴重さが見直され、1993年世界自然遺産地域に登録されました。白神山地が対象になったのは、青秋林道建設問題を契機とした民間団体等の自然保護運動によるところが大きいそうです。しかしながら、これまで「保護」の側面ばかりが優先され、地域住民とはかけ離れた存在になっていました。渋谷さんは平成24年2月に設立された一般財団法人白神山地財団の理事長もされているのですが、白神山地の真の価値を再発見し、地元の人たちが関われるようにしたいと設立したそうです。「白神山地のガイドを含め、“森が単独で存在しているわけではない(=共生している)”と共通の認識が広まっている」という言葉が印象的でした。
 その後、白神山地に移動し、有限会社エコ・遊の土岐司さんのガイドのもとブナの森をトレッキングしました。ブナの森はとても明るいのですが、間伐しているのか聞いたところ、「ブナの木同士が間合いを取っている」そうです。陽が射し込むように、互いに枝をのばす方向を遠慮して譲り合っていると教えてもらいました。人間社会もブナに学ばなければならないですね。
渋谷拓弥さんの「3.11あの時」はこちら

EPOインターンシッププログラムの前半が終了し、今回ご協力いただいた東北各県の皆さんとEPOちゅうごく・EPO九州のインターンのお2人に、改めて東北の良さを教えていただいたと感じました。プログラム後半のレポートもぜひご覧ください。

(Report/Oyamada)