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活動のご報告

活動のご報告

<催事参加>海岸林再生プロジェクト講演&シンポジウム/2016.5.14

2016.05.17 17:10

東日本大震災の津波で被害を受けた海岸林の再生について考えるシンポジウムが開かれました。
EPO東北は会全体の司会進行役としてお手伝いさせていただきました。
 
【タイトル】海岸林再生プロジェクト 講演&シンポジウム
【日時】5月14日(土)13:00~16:00
【会場】名取市文化会館
【参加】約50名
【主催】ゆりりん愛護会
【協力】白砂青松再生の会
【協賛】公益財団法人ゴルフ緑化促進会
 

■第1部 講演会「津波被災地における海岸林造成の問題点」
講師 小川眞氏(白砂青松再生の会会長、大阪工業大学工学部客員教授)
 
 喪失した海岸林再生のために不足した土を補おうと、山の土を持ってきた事例が多々見られますが、山の土は粘土質を含み、海の土とはミネラル量や棲んでいる微生物が違います。また粘土質の土は水を含むと固くなるため、植樹した松の根が固い土に阻まれて曲がってしまいます。客土として山の土を使った場合は失敗することが多いように感じています。
 
 キノコ類と木の根が絡み合い、互いに共生する関係にある状態を「菌根共生」と呼びます。実験ではショウロ(キノコの一種)の菌を付けた苗はしっかりとした苗が育つこと、根に菌がついているかどうかでその後の活着率、成長度に違いが現れることがわかりました。
 
 海岸林を再生するにあたっては、その後のメンテナンスの仕方をよく考える必要があります。下草刈りは誰がしますか?間伐は誰がしますか?昔のように落穂広いをし、燃料としての活用が想定されない現代社会にあわせて、地域で継続的にメンテナンスできる範囲へと縮小を図るなどみんなで守っていける体制を構築する必要があります。みんなで植えたものをみんなで守るために、植える時から地域の若い世代も巻き込んで地域コミュニティの形成を図るなど、工夫をする必要があると考えます。
 
   
 
会場には菌を付着させた松苗や事例のパネル展示も行われ、休憩時間には参加者同士で活発な意見交換が交わされていました。
 
 
■第2部 シンポジウム「海岸林再生と市民活動」
コーディネーター 栗栖敏浩氏(株式会社環境総合テクノス地球環境グループ)
パネリスト 鈴木善久氏(高田松原を守る会代表)
      大橋信彦氏(ゆりりん愛護会代表)
      新妻香織氏(松川浦はぜっ子倶楽部代表)
 
 岩手県陸前高田市、宮城県名取市、福島県相馬市で活動する各団体から、海岸林再生の取組について紹介され、参加者からの質疑を交えながらパネル討論が行われました。
 
≪高田松原を守る会≫
 2006年に市民有志により結成されました。震災前に拾っていた松かさから種を採取して苗木を育て、茨城県から寄せられた抵抗性の苗木とあわせて約6,500本の松苗が育っています。もととなった松かさで作ったリースが披露され、当時はこの松かさが海岸林再生の希望の種だったのだと伺えました。
 
≪ゆりりん愛護会≫
 地元の子どもたちを対象に海岸林で季節ごとに森のことを楽しく学ぶ森の教室を開催してきました。震災後は生き残った松から松かさを集め、白砂青松再生の会と協力してショウロを共生させた苗の育成に取り組んでいます。
 
≪松川浦はぜっ子倶楽部≫
 松川浦の豊かな恵みを後世に伝えていこうと、干潟の生き物観察や水質調査、清掃などの活動に取り組んできました。震災後は松川浦大洲海岸林の再生に取り組み始め、国有林0.45haを10年間管理することとなり、4月には市民とともに1,500本の木を植えました。
 はぜっ子倶楽部の代表は、荒れたエチオピアの土地に273万本もの木を植え、13年をかけて緑化させた実績があります。喪失した海岸林とかつてのエチオピアを重ね、今や森を形成するに至ったエチオピアの木々や満々とたたえる水は「希望」であること、決して諦めずに希望を植えるのだと熱のこもった訴えかけが印象に残りました。
(Report/Suzuki)