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活動のご報告

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<EPO東北>再生可能エネルギー交流会「第3回みちのく薪びと祭りin福島みなみあいづ」/2016.11.26-27

2017.02.02 17:50

 EPO東北では、平成23年度以降、再生可能エネルギーを主題とする交流会を3回開催し、東日本大震災時に再生可能エネルギーが果たした役割等の情報共有や今後の可能性に関して、再生可能エネルギーに携わる東北各地の方々と議論を重ねてきました。交流会にご参加いただいた方々から「分野別の交流会を開催したい」「継続して実施したい」との声が多く見られたことを受けて、平成25年度にはBDFと薪をテーマとした分科会を開催しております。
 平成26年度には、前年度の交流会参加者からの「活動現場により近い場所で開催しよう」という発案で、山形県鶴岡市での第1回「みちのく薪びと祭り」が実現しました。みちのく薪びと祭りは、継続的な交流を通じ、お互いが抱えている課題などを共有して解決のヒント得たり、活動継続のモチベーションへとつなげたりすることが目的です。毎年持ち回りで行われており、第2回は岩手県遠野市が開催地となりました。
 第3回となりました平成28年度は、東日本大震災後の福島の薪利用の現状について学び合うことを目的として福島県南会津町で行われました。
 
日時:2016年11月26日(土)13:00~27日(日)15:00
場所:
 1日目 福島県建設業協会 田島支部会館
 2日目 NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク活動現場(放射線測定工場、関根木材工業株式会社、ほしっぱの家)
参加:薪に関心のあるNPOや企業、行政、個人など76名
主催:NPO法人みなみあいづ森林ネットワーク、東北環境パートナーシップオフィス(EPO東北)
共催:ふくしま薪ネット、NPO法人南会津はりゅう里の会、NPO法人湯田組、EIMY湯本地域協議会
協力:薪ストーブ愛好会くべる部、いちのせき薪の会、NPO法人遠野エコネット、NPO法人吉里吉里国、
  西和賀町林業振興課、NPO法人川崎町の資源をいかす会、NPO法人しんりん、
  二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト、三瀬の薪研究会、やまがた自然エネルギーネットワーク
後援:福島県、南会津町
 
内容:
■1日目:11月26日(土)
(1)みちのく薪びと祭り開会式(開会挨拶ならびに主催団体の紹介)
 
(2)第1部「広島県北広島町と東北各地の事例」
◇基調講演
 北広島町立 芸北 高原の自然館 白川勝信氏
◇事例紹介
 NPO法人吉里吉里国 芳賀正彦氏
 鶴岡市三瀬地区自治会 石塚慶氏
 NPO法人川崎町の資源をいかす会 菊地重雄氏
 葛巻町森林組合 竹川高行氏
 
(3)第2部「震災後の福島県の薪利用の現状」
◇現地報告
 福島県 林業振興課 古川成治氏
 ふくしま中央森林組合 会田明生氏
 有限会社アルパイン 大●善博氏
 公益財団法人ふくしまフォレスト・エコ・ライフ財団 佐藤重敏氏
◇パネルディスカッション
 【コーディネーター】北広島町立 芸北 高原の自然館 白川勝信氏
 【パネリスト】
 現地報告の皆さま4名、ふくしま薪ネット 渡部昌俊氏
◇講評
 東北大学名誉教授・ノコギリスト 新妻弘明氏
 
(4)夕食・懇親会(情報交換・交流や次年度開催県への引き継ぎ)
 
■2日目:11月27日(日)
(5)第3部「みなみあいづ森林ネットワークの取組」
 活動現場(放射線測定器、自動薪割り機や県産材を使用した建物「ほしっぱの家」)の見学
 
(6)薪・里山シンポジウム開会挨拶(※)
 
(7)合同企画講演会~山となりわい、山といきものを考える~
◇講演
 株式会社森守 黒田利貴男氏
 薪割りスト 深澤光氏
 
(8)みちのく薪びと祭り閉会挨拶
 
※第3回みちのく薪びと祭りは、2日目プログラムの一部が、日本EIMY研究所などが主催する「薪・里山シンポジウム」との合同企画講演会となりました。
 
 1日目は、開会式にて主催者代表の挨拶の後、主催であるNPO法人みなみあいづ森林ネットワークの松澤瞬さんより団体紹介を行いました。みなみあいづ森林ネットワークは、2005年頃から活動を開始し、2013年にはNPO法人となり、「地域産材の利用促進・拡大事業」「森林認証事業」「薪販売事業」「イベント事業」など南会津の森林を活用する取組を展開しています。
 その後の第1部は「広島県北広島町と東北各地の事例」と題し、基調講演と事例紹介を行いました。はじめに基調講演では広島県北広島町の芸北 高原自然館の白川勝信さんから、里山を活用する「芸北せどやま再生事業」についてお話しいただきました。「せどやま(背戸山)」とは家の裏手にある山を指す言葉。住民が切り出した木を少量でも安定して買い取る仕組みを作ることで、里山の景観保全や生態系保全、木質バイオマスの利用促進を図る事業です。芸北地域だけで使える地域通貨を活用することで、地域経済の活性化にもつながり、この事業は全国的に注目されています。
 続く東北の事例紹介では、4名の方よりお話しいただきました。
 NPO法人吉里吉里国の芳賀正彦さんからは、東日本大震災後、岩手県大槌町にて薪の販売活動等を行うようになった経緯が語られました。津波で自宅が全壊し、避難所で過ごしていた時、焚き火が心を落ち着かせてくれたそうです。震災以前と同じ姿で残っている地域の山林から、その恵みを分けていただきながら、山や薪と共に生きていくという覚悟を決めて活動していると力強く訴えておられました。
 鶴岡市三瀬地区自治会の石塚慶さんからは、地域の資源である木質バイオマスを活用することで、森林整備を進め、地域内でお金を循環させ、地域の活力へとつなげることを目的とした再生可能エネルギー事業について報告がありました。少子化や人口減という三瀬の地域課題解決に向けて取り組んでいるさまざまな事業のうちのひとつで、各機関と連携しながら、まずは地元の施設へのボイラー導入や薪を使ったピザ試食会や薪ストーブの展示等の住民への普及啓蒙活動を展開していくそうです。
 NPO法人川崎町の資源をいかす会の菊地重雄さんからは、宮城県川崎町において活動するグループ「川崎-仙台薪ストーブの会」の取組が紹介されました。町有林を払い下げてもらい、森の再生と薪の確保を目的に、毎月森の手入れを行い、作業を安全に行うための講習会なども実施しています。7名のメンバーで始めたこの活動は、現在では会員約100名となり最近では女性の参加が増えているそうです。
 最後に、葛巻町森林組合の竹川高行さんからは、現在新たに進めている取組「薪の道」の紹介や2010年に開校した「薪の学校」について紹介がありました。「薪の道」は、江戸時代に三陸沿岸で盛んに作られた塩や鉄を南部藩の中心地である盛岡や江戸(東京)まで運んだ山道「塩の道」にならい、葛巻から東京へ薪をというコンセプトで進められています。「薪の学校」では首都圏向けの薪の販売や関連するイベント、小学生向けの森林環境教育などが実施されているそうです。
 第2部では「震災後の福島県の薪利用の現状」と題して、行政、森林組合、薪ストーブ店、ユーザーの方々より現地報告とパネルディスカッションを行いました。
 福島県林業振興課の古川成治さんからは、東京電力福島第一原子力発電所の事故後の薪の放射性物質に関する注意喚起と測定の動きについての説明がありました。主に、薪の指標値設定までの経緯と対応、今後の薪の使用と灰の取り扱いに関する注意点についてお話しいただきました。
 ふくしま中央森林組合の会田明生さんからは、田村市都路地区で盛んに行われていたしいたけ原木や薪の出荷が、原発事故の後できなくなってしまった現状について、そうした中でも皆伐や更新伐を進め、地域を守り支えてきた森林・林業の再生を目指す取組を実施していると報告がありました。
 西白河郡西郷村の薪ストーブ店・有限会社アルパインの大●善博さんからは、福島県内で使用しているアルパイン薪ストーブユーザーを対象としたアンケート調査の結果が共有されました。それによると、震災直後96%のユーザーが薪ストーブの使用を継続し、直後は使用するのをやめた方々も現在は再開しているようです。また薪の入手についても線量を下げる工夫をしたり、入手ルートを変更したりして薪を活用する暮らしを続けていることが分かりました。
 公益財団法人ふくしまフォレスト・エコ・ライフ財団の佐藤重敏さんからは、安達太良山中腹にある森林公園「フォレストパークあだたら」の運営における原発事故後の対応についてお話しいただきました。フォレストパークあだたらでは森林(もり)との共生という理念や木質バイオマス普及推進を目的に、薪ストーブや木質チップボイラーが設置してあり、震災後は薪やチップの入手ルートを変更したそうです。薪や基準の遵守と情報公開を徹底しながらも、可能な限り県産材・県民加工材を使用し地域経済に貢献していきたいとご報告がありました。
 その後のパネルディスカッションでは、白川さんがコーディネーター、上記の4名とふくしま薪ネットの渡部昌俊さんがパネリストとなり議論が交わされました。「祖先が残してくれた里山を、何とかして次世代につなぎたい」と、会場の参加者の皆さんを巻き込んだ白熱した時間となりました。
 2日目の第3部では「みなみあいづ森林ネットワークの取組」を見学しました。
 1か所目は「しいたけ原木用放射性セシウム濃度非破壊検査器」を見に行きました。南会津郡内は原発事故による影響が少ない地域ですが、福島県内におけるしいたけ原木生産が減少し、風評の影響も払しょくしきれていない状況にあり、南会津産原木の安全確保を図るため平成28年1月に設置されたそうです。
 2か所目は関根木材工業株式会社の大型の「自動薪割り機」です。原木を入れるとチェーンソーで一定の長さに切られ、続いて油圧によりどんどん薪が作られていく様子を見学しました。薪割りした材は、1立米ほどの薪が入るウッドバッグで乾燥させているそうです。
 最後は縦ログ構法で建てられた「ほしっぱの家」。縦ログ構法とは、ログを横に寝かせて積み上げるログハウス(丸太組工法)と異なり、縦に並べてパネル化し壁を作る木造軸組工法のことだそうです。地域活性化の活動の拠点・地域の高齢者と若者の交流の場として活用されています。
 2日目の午後は、日本EIMY研究所などが主催する「薪・里山シンポジウム」との合同企画講演会を実施しました。講演のテーマは「山となりわい、山といきものを考える」で、はじめに静岡県南伊豆で野生のイノシシを狩り、ソーセージ等に加工して販売をしている黒田利貴男さんからお話しいただきました。森を豊かにし、人と野生獣の住み分け、いただいた命を活用することをコンセプトに掲げ、株式会社森守を立ち上げたそうです。そして薪割りストの深澤光さんから薪を活用して地域を盛り上げていくアイデアの紹介がありました。現在、薪づくり体験、薪を使ってパンやピザを焼く・食べる体験、馬搬の学習・体験などができる「薪割りランド」を構想中だそうです。
 第3回は情報が盛りだくさんの学びの多き内容となりました。参加者の皆さまからは「福島で薪や林業に関わる方々のご苦労を知ることができた」「放射性物質への対応について、きめ細かく丁寧であることを改めて理解した」などの声が寄せられており、震災後の福島の薪利用の現状を共有することができたと考えられます。第4回は宮城県で開催する予定となっております。
 
※●=木へんに髙
 
これまでの開催の様子はこちら
 
Report/Oyamada