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活動のご報告

活動のご報告

<催事協力>SDGsへの挑戦/目標13「気候変動」国際シンポジウム―キリバスの事例から―が開催されました/2017.10.20

2017.10.24 17:48

 
SDGsへの挑戦/目標13「気候変動」国際シンポジウム
―キリバスの事例から―
日 時:2017年10月20日(金)14:00~17:00
会 場:国連大学 5F エリザベス・ローズ会議場
主 催:国連大学サスティナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
協 力:EPO東北

 小さな島々から国土が構成される島しょ国は、気候変動に伴う海水面上昇によって国土浸食の危機にさらされています。南太平洋に位置し、33の環礁からなるキリバス共和国でもその危機は深刻なスピードで進行しています。
 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)と国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)はEPO東北の協力のもと、キリバス共和国からゲストをお招きし、シンポジウムを開催しました。
 
 
【第1部 講演】
講演①「キリバス共和国とは?キリバスと日本との意外な関係」
ケンタロ・オノ氏(キリバス共和国名誉領事館名誉領事・大使顧問)
 キリバス共和国は、1979年7月に独立した人口11万人の小さな国です。日本のカツオ一本釣り漁船乗組員として、現在300人あまりのキリバス人が働いています。日本からの技術協力による道路の整備、青年海外協力隊の派遣、日本企業との連携のもとマングローブの植樹が行われており、日本とは関係が深い国です。
 島の幅が350m、海抜1.5m~2mの環礁国で、国旗にも示されているように生活の中心・文化の中心が海です。この小さな島口で、すでに様々な温暖化による影響が出ています。今日はそのことを皆さんに知っていただきたいと思っています。

講演②「気候変動問題の最前線キリバスからの報告」
メーレ・リワタ氏(KiriCAN(Kiribati Climate Action Network)理事長)
 私たち自身が生き残ろうと様々な取組をしていますが、キリバスではさまざまな影響が出ています。土嚢を積んでも、満潮時にはそれを飛び越えるほどの高い波が来るようになりました。野菜を育てても高潮の被害にあい、建物に浸水し、雨の降る地域で降らなくなり、渇水によって枯れた井戸があります。
 いくつかのパートナーと連携して、マングローブの植樹、雨水をためるタンクの整備、野菜やココナツなど食糧を育てています。子ども達と一緒に町のクリーンアップ活動や、ユースが活躍するプログラムも実施しています。これまで未着手であったエネルギーの問題では、日本のMELONというNGOと連携が始まりました。たき火で料理をすることで女性たちの健康が脅かされているので、取り組みと並行して女性に人権を教えていかなければならないと考えています。
 生命に関する権利、水に関する権利、先住民の権利、安全保障。それぞれの生活に何が必要なのかを知って、権利を保障してもらいたいと思っています。私たちが生活を楽しめるよう、支援していただきたい。小さな島国の話を聞いてもらい、心から感謝します。
 
 
 
講演③「気候変動問題に対するキリバス共和国のエネルギーの取り組み・責任のある国際社会の一員として、そしてキリバス共和国を守るために」
キレウア・ブレイモア氏(キリバス共和国インフラ・持続可能なエネルギー省エネルギー
計画局長)
 気候変動問題に関する対応は優先すべきことですが、キリバスにおいては対応策が適応策でもあります。2015年には、エネルギー政策に関する2025年までのロードマップを策定しました。再生可能エネルギーはキリバスでも、もっと増やしていけると考えています。家庭での消費が最も多いので、エネルギーの効率を高めたいと考えています。太陽光など既にいくつかのプロジェクトを推進しており、45万ドルの節約ができました。
 パリ協定にはとても期待しています。そしてこれは大事な機会ととらえています。
 
講演④「気候変動対策の国際的な動向とUNU-LASの取り組み」
リザンヌ・グルエン氏(国連大学サスティナビリティ高等研究所(UNU-IAS))

 気候変動枠組み条約におけるCOP23はボンで開催されます。そして議長国は、キリバスと同じように地球温暖化の最前線国であるフィジーです。これからはグローバルなレベルでのパートナーシップが必要であり、新しい技術革新が求められると考えています。エネルギーの効率性を向上させ、クリーンエネルギーを広めていくことの研究や試験的な取組ではなく、アクションへと取組を移行していかなければならない時期にきています。パートナーシップはとても重要で、今後の鍵になるでしょう。先進国の技術支援によって途上国でも能力の経済、地域経済の発展が期待できると考えています。
 
 
 
 
【第2部 ディスカッション】
「国際的なパートナーシップで気候変動問題にどう取り組むか」

モデレーター:星野智子氏(環境パートナーシップ会議 副代表理事)
パネリスト:ケンタロ・オノ氏、メーレ・リワタ氏、キレウア・ブレイモア氏、
      トアキ・アリノコ氏(KiriCAN理事・技術顧問)、リザンヌ・グルエン氏
 
◆民間セクターの役割について
・政府を助けることも重要だ。そしてコミュニティの中で女性が発言をすること、女性の議席数を増やすことも大切だと考える。
・重要なのは政策の手助けだ。先進国からの技術移転では国に適応する形を考えることが成功要因の一つだと考える。そして、人の教育・訓練も同時に取り組む必要がある。
 
◆気候変動対策について
・キリバスでは今まで経験したことのない事象が起こるようになった。2015年にコペンハーゲンで行われた会議は、期待していたが何も起こらなかった。温暖化は人間が引き起こした課題だ。だからこそ、人間が解決できる問題だと考えている。
・COP23はとても重要な会議になる。先進国はすでに合意している。官民のパートナーシップを作るための努力、イノベーションに富んだ技術によって途上国をサポートし、経済と環境と発展を両立させた取り組みを実施に移す時だ。
・COP23はどうなるだろうか。パリ協定が紙きれで終わらないように、現実性を持った運用を期待している。政府を動かすのは国民だ。国民を動かすためには、まずたくさんの人にこの問題を知ってもらいたい。
 
◆グローバル・パートナーシップについて
・キリバス共和国にはどうやって地球温暖化を緩和させるか、分厚いファイルがある。しかし、これから必要なのは研究ではなくアクションだ。どうやって実施に向かうのか、COP23で話し合われることを期待する。
・今回は小さな島国にトピックをあててくれて嬉しく思う。小さな村に行くと生活様式は昔と変わらず、気候変動にも無関心だ。私たちの友人にサポートをしてもらい、変革を起こしたい。
・他人事と思わないでもらいたい。皆さんにも関係のあることだ。私たちは国がなくなる前提で話をしたくない。
・パートナーシップは与えるものではなく、同じ目線に立って一緒に進んでいくものだと考える。
 
 
 地球温暖化の最前線国であるキリバスですでに起きている影響についてスライドを交えて報告があり、参加者からは「ショッキングだった」との声も聞こえました。シンポジウムでは政府と民間の具体的な取組みとともに、それぞれの思いを伺うことできました。すでに起きているこれらの課題は等しく日本の課題であるというメッセージを参加者と共有でき、有意義な学びの機会となりました。
 
(Report/Suzuki)